A-Life News

2021.09.08

A-Life 通信 vol.016 『コロナ労災』認定件数1万以上!

□□ 目次───────────────────────────────────────── ■■

 

1)『コロナ労災』認定件数1万以上!

 

2)感染源がわからない…それでも労災になる?

 

3)コロナ労災、どんな事例がある?

 

4)会社としてなすべき配慮

 

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 1コロナ労災』認定件数1万以上!

業務中の災害に対して保証が出る「労災保険」ですが、2021年8月20日時点
で、新型コロナウイルス感染による、労災保険請求件数16736件、認定12430
、不支給256件となっております。はじめに労災について簡単に確認してお
きましょう。
労災とは…
労災(労働災害)とは、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、
障害、死亡等」のことをいいます。労働災害については、労働者が業務上負傷
した場合には、会社が治療費を払ったり、休業中の賃金の一定の割合を支払わ
なければなりません。(労働基準法第75条、76条)

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 2感染源がわからない…それでも労災になる?

厚生労働省では下記の通り、コロナウイルスの労災対応・認定について具体
的な3つの基準を挙げています。

1.医療従事者など
診療や看護、介護の仕事に携わる、医師や看護師、介護従事者が感染した場
合は、原則として労災保険給付の対象となります。明らかに業務外で感染
した場合は除く)

2.医療従事者以外で感染経路が特定された場合
感染源が職場内にあったことが明らかに認められる場合は、労災保険給付の
対象となります。

3.医療従事者以外で感染経路が特定されないが、感染のリスクが高い場合
感染経路が特定されないときでも、感染リスクが高いと考えられる以下のよ
うな環境で仕事をしていた場合は個別に判断します。

・請求する人を含めて2名以上の感染者が確認された環境下での仕事

・顧客等との接触の機会が多い労働環境

 

参考:新型コロナウイルス感染症の労災報償における取扱いについて
厚生労働省通達
https://www.mhlw.go.jp/content/000797792.pdf

 

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3コロナ労災、どんな事例がある?

実際に、新型コロナに感染して労災に認定された例が厚生労働省から発表
されています。下記に事例を見てみましょう。

 

1. 医療従事者等の例 

【医師の事例】
A医師が診察した患者に発熱等の症状がみられ、その患者は後日新型コロナ
ウイルスに感染していたことが判明した。その後、A医師は発熱等の症状が
出現し、濃厚接触者としてPCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス
感染陽性と判定された。労働基準監督署における調査の結果、A医師は、業
務外で感染したことが明らかではなかったことから、支給決定された。

 

2. 医療従事者以外で感染経路が特定された例

【飲食店店員の事例】飲食店店員のEさんは、店内での業務に従事していた
が、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたこと
から、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
また、労働基準監督署における調査の結果、Eさん以外にも同時期に複数の
同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。以上の
経過から、Eさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定さ
れ、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、
支給決定された。

 

【建設作業員の例

建設作業員のFさんは、勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、
後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確
認された。Fさんはその後体調不良となり、PCR検査を受けたところ新型
コロナウイルス感染陽性と判定された。また、労働基準監督署における調査
の結果、Fさんについては当該同僚以外の感染者との接触は確認されなかっ
た。以上の経過から、Fさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経
路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断され
たことから、支給決定された。

 

3. 医療従事者以外で感染経路が特定できないが感染のリスクが高い事例

 

【タクシー乗務員の事例】タクシー乗務員のIさんは、乗客輸送の業務に従
事していたが、発熱の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型
コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準監督署において調査したと
ころ、Iさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内
容については、日々数十人の乗客(海外や県外からの乗客を含む)を輸送す
る業務を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられ
る業務に従事していたものと認められた。一方、発症前14日間の私生活で
の外出については、日用品の買い物などで、私生活における感染のリスクは
低いものと認められた。医学専門家からは、密閉された空間での飛沫感染が
考えられるなど、当該乗務員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いも
のと認められるとの意見であった。以上の経過から、Iさんは新型コロナウ
イルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客
との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した
蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

 

 

【工事現場施工管理者の事例】

工事現場の施工管理業務従事者であったGさんは、担当する現場の施工状況
を管理する業務に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PC
R検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。労働基準
監督署において調査したところ、Gさんの感染経路は特定されなかったが、
発症前の14日間に、換気が不十分な工事現場の事務室において日々数時間
現場作業員らと近接な距離で打合せ等を行っており、Gさんの他にも、新型
コロナウイルスへ感染した者が勤務していたことが認められた。一方、発症
前14日間の私生活については、自宅で静養するなど外出はほとんど認めら
れず、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。医学専門家か
らは、換気が不十分な部屋で、他の作業者と近接な距離で打合せを行うなど
の状況から、当該労働者の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと
認められるとの意見であった。以上の経過から、Gさんは、新型コロナウイ
ルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、複数の
感染者が確認された労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋
然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

 

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4)会社としてなすべき配慮

 会社が、“一般生活における感染リスクを超える”内容の業務に従業員を従事
させる場合には、「安全配慮義務」の一環として、感染リスクを可能な限り
低減させるような措置をとるべきものと考えられます。例えば、従業員を屋
内で長時間稼働させる場合には、換気を良くしておいたり、従業員に不特定
多数の顧客と至近距離で対応させる場合には、飛沫対策として従業員と顧客
との間に仕切り板を用意したりする等、生じる感染リスクに応じた措置をと
るべきでしょう。なお、新型コロナウイルスに感染した患者と接触する業務
をさせる場合には、より厳重な対策が必要と考えられます。会社として、容
易に認識できる業務上の感染リスクがあり、その対策が易しいにもかかわら
ず怠ったことにより従業員が新型コロナウイルスに感染した場合には、会社
に「安全配慮義務違反」が認められることとなります。

もし会社で感染の疑いがあったときには、悩まずにまず申請をすることが大
切です。
今一度、労災とコロナウイルスの関係を理解し、会社と従業員様を
守る対策をとりましょう。

 

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