A-Life News

2025.06.30

A-Life 通信 vol.033 令和6年(2024年)12月に改定されたiDeCo制度について

□□ 目次──────────────────────────────────────── ■■

 

令和6年(2024年)12月に改定されたiDeCo制度について

 

□□ ─────────────────────────────────────────── ■■

1. 改定の背景と目的 📈

令和6年12月1日、確定拠出年金(DC)制度がおおきく見直されました。特にiDeCoに関しては、企業年金制度(企業型DC・確定給付年金DB・共済など)とiDeCoを併用する方に対し、拠出限度額の引き上げや加入手続きの簡素化などが図られました。これは、公的年金だけに依存しない老後の資産形成を支援するため、制度の公平性と利便性を高める狙いがあるとされます。

2. 拠出限度額の全面的見直し

2-1. 限度額の引き上げ(第2号被保険者)

・従来、企業年金等と併用する第2号被保険者(会社員・公務員)のiDeCo拠出限度額は月額1万2,000円に制限されていました。
・2024年12月以降は、最大で月額2万円に引き上げられます。

※ただし、条件として「55,000円 −(事業主掛金+他制度掛金相当額)」で計算し、これが2万円未満であれば、そちらが上限になります

例:

 

併用制度 事業主掛金 +
他制度掛金相当額
引き上げ後の
計算値
課される
上限
実際の
上限
企業型DC:1万円
DB等:2万円
3万円 5.5万円−3万円
=2.5万円
2万円 2万円

 

一括で資産設計をしやすくなり、多くの会社員・公務員にとって月額8,000円の拠出余地が増える計算です。

2-2. 拠出できなくなるケースも

併用する制度の掛金相当額が大きい場合、次のような逆転現象も発生します。

  • 他制度掛金が4.5万円なら → 5.5万円−4.5万円=1万円 → 限度額は1万円(従前より減少)

  • 他制度掛金が5.2万円なら → 5.5万円−5.2万円=0.3万円 → iDeCo最低の5千円を下回り、拠出不可

単純に「増えた」と喜べない場合もあるため、自身の勤務先制度内容は必ず確認すべきです。

3. 加入手続きのスリム化

 

3-1. 事業主証明書の廃止

従来、iDeCoの加入や掛金変更には、勤務先の事業主証明書が必須でした。
12月改正により、新たに手続きする際の事業主証明は不要(ただし従業員払い込に切替希望時は別途証明書が必要)
ペーパーレス化の促進や加入障壁の撤廃に直結する大きな前進です。

3-2. 年単位拠出の制限

第2号加入者は、年単位(ボーナス月などにまとめて支払う)拠出が制限され、毎月拠出のみ利用可能となります。
企業年金プラットフォームでの掛金管理が主目的です。

4. 脱退一時金の新設・拡充

掛金上限の見直しに伴い、「脱退一時金」を受けるケースが増加しました。

  • 他制度の掛金相当額が大きくなり、5,000円未満の拠出しかできなかった場合

  • 資産残高が25万円以下など要件を満たせば、脱退一時金制度の活用が可能になります

これにより拠出が難しくなった加入者も、積み立て資産を現金化し、今後の運用を整理できる制度が整備されました。

5. 制度改正の利便性と公平性

🔹 利便性の向上

  • 加入時の書類簡素化:手続きが迅速に

  • 拠出額アップ:掛金の上限拡充で節税・積立余地が拡大

  • 脱退一時金で現金化の選択肢が明確に

🔹 公平性の確保

拠出限度が「55,000円-併用掛金相当額」に変更されたことで、企業年金利用者同士の公平性が担保されました

6. 加入者が知るべきポイント

  1. 勤務先年金制度の内容把握:併用制度の掛金相当額を確認

  2. 運営管理機関への手続き:掛金変更届や脱退一時金手続きは必要

  3. 拠出方式の確認:年単位→月単位に変更が必要なら早めに

  4. 手数料負担と運用方針の再構築:拠出額の増減により運用商品や割合も見直し

  5. 税効果の活用:所得控除枠内で最大限に節税を意識

7. まとめ表

項目 改正前 改正後(2024年12月〜)
拠出限度額(第2号併用) 月額12,000円 最大月額20,000円(※55,000円-他掛金相当額上限)
限度額未満の場合 最低設定可能(月5,000円) 他掛金が多いと拠出不可のケースあり
事業主証明 必要 不要(企業払込時のみ必要)
拠出方式 月単位/年単位可 月単位のみ
脱退一時金 条件付きでなし 資産次第で脱退一時金受給可

 

8. 今後の展望

本改正により、より柔軟に老後資産形成を図るiDeCo利用者が増える見込みです。また、2025年度には加入年齢の引き上げ(65歳→70歳)や拠出限度額の全体的アップ(第1号被保険者・第2号被保険者)も予定されています。

制度設計の方向性としては、長寿化に対応し、公的年金との連携を強化した老後保障の枠組み強化が一貫しており、今後も改正動向を注視すべきです。

9. 最後に:加入者へのアドバイス

  • まずは勤務先の年金制度担当窓口へ確認

  • 圧縮された場合の対応として脱退一時金や掛金変更の準備

  • iDeCoへの加入継続や増額を考えている方は、拠出手続きの時期や方法を早めに動くこと

改定をきっかけに、自身の資産形成戦略を見直し、iDeCoの活用を最大化する好機と捉えてください。

□□ ─────────────────────────────────────────── ■■

以上が、令和6年12月に改定されたiDeCo制度改正の全体像です。ご自身の老後資金設計にお役立てください。